2021-05-10
2021-05-10

新型コロナウイルスにより大きな変革期を迎えている小売業。そんな中、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれるビジネスモデルが、再び注目を浴びている。

前編ではD2Cの定義や、現在の市場状況について紹介した。
後編では具体的な事例とともに、代表的な国内ブランド、D2Cを支える新たなビジネスや、今後の市場動向について解説する。


業界をまたいで広がるD2C

D2Cは米国発のビジネスモデルで、メーカーやブランドが自社で企画・製造した商品を、仲介業者を挟まず直接顧客へ販売する仕組みだ。米国からやや遅れてD2Cへの参入が始まった日本国内でも、多くのファンを持つブランドが増えつつある。

アパレル業界では、オーダースーツの「FABRIC TOKYO」、レザーアイテムを販売する「objcts.io」、10年着続けたいと思える服を売る「10YC」、インターネット時代のワークウェアを提供する「ALL YOURS」。

食品業界では、引き算のチョコレートをテーマにした「Minimal」、パーソナルスムージー「GREEN SPOON」、人生最高のチーズケーキをテーマにした「Mr. CHEESECAKE」、完全食の「BASE FOOD」。

美容業界ではオーダーメイドヘアケアブランド「MEDULLA」、パーソナルサプリを提供する「FUJIMI」、男性用化粧品の「BULK HOMME」など。その分野は多岐に渡る。

一定の参入障壁がある医薬品業界

一方、医薬品業界は、法律などの関係からD2Cへの参入に一定の障壁がある状態だ。そんな中、2021年1月21日に米国で上場したのが、ウェルネス商品のD2C展開を行うHims & Hers Healthだ。

hims公式サイトより引用

hims公式サイトより引用

同社が運営する「hims」の主力商材は薄毛やEDの解消を対象とした”コンプレックス商材”とも称されるものだ。オンライン診療も提供しており、処方箋が必要な商品を購入することができる。こうしたオンライン完結のサービス提供は、その商材の特性上、対面では相談・購入しにくかった男性の需要を的確に捉えた。

日本に比べて米国で医療ビジネスが盛んな背景には、医療費の自己負担の有無がある。米国では医療費の自己負担が前提であり、薬のより安価な提供や、プライマリーケアへの関心が高いのだ。

その反面、国民皆保険制度を採用し、安価に高水準の医療を受けられる日本では、ニッチな要望を満たす医療ビジネスは産まれにくい。

 
とはいえ、そんな日本でもコロナ禍や地方の過疎化、高齢化などを受け、オンライン診療・オンライン医薬品販売の需要は年々高まっている

2014年の改正薬事法施行により、一般用医薬品のインターネット販売が可能になったことから、法律の壁もなくなりつつある。直近では、2021年2月にローソンが「Uber EATS」と提携し、一般用(OTC)医薬品の配達を開始したことで大きな話題を呼んだ。

他の業界に比べてD2Cビジネスが少なく見える医薬品業界も、今後さらなる動きを見せるだろう。

D2Cを支える新たなビジネス

D2Cを支える新たなビジネスも続々と登場している。
RaaS(Retail as a Service)分野ではサブスクリプション型の体験店舗が登場。代表的な企業である「b8ta」は、同名の実店舗を有し、オフライン訴求を行いたいD2Cブランドなどへブースを貸し出している。

b8ta公式ページより引用

b8ta公式ページより引用

b8taの体験型店舗は、従来の委託型の小売業とは大きく異なる。委託販売の場合、小売店は販売マージンを設定しており、商品の売り上げの一部のみがメーカーへ支払われる。一方、b8taではこうしたマージンは設定されておらず、メーカーはブースに応じたサブスクリプション型の固定費用を払う。いわばスペース貸しのモデルである。

また、販売時にはb8taからメーカーへマーケティングデータを提供するため、D2Cが重要視するダイレクト性も損なわれない。実店舗を実験的に持ちたいD2Cブランドにとっては、重要なチャネルになる。

SUZURI公式ページより引用

SUZURI公式ページより引用

個人のD2C開業をサポートするビジネスも盛んだ 。GMOペパボが運営する「SUZURI」では、在庫を抱えることなくアイテムを作成・販売が可能なことから、製造拠点や流通経路を持たない個人でも、気軽にD2Cブランドを開始することができる。

海外でのEC販売を支援するビジネスもある。オンラインにより全世界への情報発信が容易になった一方で、依然として言語や通貨の壁は厚く、海外へ商品を販売することは難しかった。

ネットショップの開設をサポートする「Shopify」は、言語の自動翻訳や世界各国の決済方法に対応することで、D2C企業の越境EC開設を助けている。

大手企業によるD2C参入・支援の動き

スタートアップの文脈で興隆してきたD2Cだが、国内大手企業による相次ぐ参入も話題を呼んだ。

大手SPAストライプインターナショナルは2020年、D2Cブランドを立ち上げると発表した。一方、丸井グループはD2Cブランドを支援する新会社を設立。D2Cブランドへの投資・融資やリアル店舗の出店と運営の支援、D2Cブランドのキュレーションサイトの構築などを通じて、業界全体の成長と発展を目指す。

参入に支援にと、今後も話題には事欠かなそうだ。

これからのD2C

D2Cの概念は比較的新しく、語り手によってその意味が異なることも多い。近年は派生単語が産まれており、D2Cの中でも「デジタルに慣れ親しんだ若者向けに製造・販売を行うブランド」を指すDNVB(Digitally Native Vertical Brand)という言葉が話題になるなど、そのビジネスモデルは日々多様化している

将来的には、企業・個人、オンライン・オフライン、国内・海外の垣根を超えて、これまでD2Cが確立してきた消費者とのコミュニケーション手法が、小売のスタンダードになっていくことが予見される。

「ダイレクトに消費者とコミュニケーションを行う」という根幹を維持しつつ、D2Cに包含されるニュアンスはこれからも変化し続けるだろう。

この記事を書いた人
ムラキ
bosyu / bosyu Jobs / Jobs Primeのプロダクトデザイナー。たまにライターとして経済メディアで記事執筆したり、他のプロダクトのお手伝いしたりもしてます。
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